厨房設備の排気ダクトについて消防に確認 明大前の賃貸併用二世帯住宅

明大前の賃貸併用二世帯住宅』(地下RC+木造2階建)の賃貸部分の住戸には、IHクッキングヒーターのついたミニキッチン(W900)を設置します。コンロはIHの一口タイプで熱量は小さいため100Φの換気扇がついた既製品です。ミニキッチンに付属した換気扇から外壁貫通部のフードまでの間は、長さ600程度の「ダクト」で繋ぎますが、その「ダクト」の材料について、消防法の規定があるため所轄の消防署に電話で問い合わせました。

東京都の火災予防条例も読み込み相談したのですが、電話でははっきりした返答がもらえず、直接来て説明して欲しいと言われました。緊急事態宣言が出たばかりで、外出を控えたい思いを抑えながら、消防署に資料を揃えて相談に行きました。(4/9)


↑サンワカンパニー ミニキッチン クラシコ
賃貸住戸に使うミニキッチンは極一般的なタイプで、IHコンロのもの。

ミニキッチンも含まれる厨房設備の「排気ダクト等」については、東京都の火災予防条例第3条の2の第1項1号〜5号[特に2号(イ〜チ)、3号(イ〜ハ)]に具体的な基準があり、さらに火災予防条例の技術的基準により細かい条件が書かれています。

関連部分を大胆に要約すると、下の3つの条件を全てクリアすれば、「排気ダクト等」の規定には該当しなくなります。

a.消費熱量が大きくないこと(入力21kW以下)[第3条の2の第1項2号の(イ)]​

b.使用頻度が低いこと

c.排気ダクトは内面を滑らかに仕上げること[第3条の2の第1項2号の(ト)]

しかし、ここで意外に難しい問題となるのは、c.の「内面を滑らかに仕上げること」のところです。この意味するとことは、滑らかでない部分に油がたまり、それが高い火力にによって引火または発火して火災につながることを防止することです。実際には a.の消費熱量とも関連してくるはずなのですが、aとcが別々の項目となり関連づけられていない条文構成になっています。

消防署の担当の方には、油の引火点(火を近づければ燃えだす温度)は300〜320℃、油の発火点(油自体が燃えだす温度)は370〜400℃に対して、ミニキッチンに付属したIHクッキングヒーター(300W〜1300W)の最大の火力は200℃と小さく、ダクトに溜まった油への引火・発火はおこらないと説明しました。条文のaとcが関連づけられていないことは論理的でないのではないかとも主張したのですが、「署内で検討して連絡します」とその場での回答は得られませんでした。

消防署から電話での回答があり、
条文上、a.とc.は別になっていて、a.に合致させなくてもよいものも、c.には合致させる必要があるとの見解は変わらず、フレキシブルダクト(ジャバラダクト)の使用を認めてもらうことはできませんでした。

一般に工事で使われるダクトには、フレキシブルダクト(ジャバラダクト)とスパイラルダクトがあります。どちらにも鋼板製のものがありますが、板厚と構造が違っていて、板厚が薄く(0.08mm程度)​蛇腹状の​フレキシブルダクトは容易に曲げることができますが、板厚が厚く(0.6mm程度)螺旋状のスパイラルダクトは曲げることができません。実際の工事においては、ダクトを曲げる必要が生じることが多いため、フレキシブルダクトの使用や、一部曲げ部分のみの使用を​認めている県や自治体もあるようです。しかし、東京都の場合はこの条文を根拠として、「フレキシブルダクト」の使用を基本的には認めないスタンスのようです。

一設計者としては、今後はa.とc.を関連させたり、フレキシブルダクトの一部への使用を認めるなど、現場の実情も考慮して条文を変えるなど、安全に支障をきたさない範囲で見直す方向に向かってほしいと感じます。


↑フレキシブルダクトは板厚が薄く​蛇腹状で​容易に曲げることができます


↑スパイラルダクトはフレ板厚が厚く丈夫ですが曲げることができません

一般的なキッチンレンジフードに使われる150Φのダクトには、富士工業から回転式フレキシブルダクトTFD-15という優れものがでています。しかしながら、100Φには需要がないためかこれに類するものがありません。


↑ TFD-15 回転式フレキシブダクト 富士工業 レンジフード 配管部材

ミニキッチンの換気扇からフードまでの間の短い区間で、100Φのスパイラルダクトを45°エルボを使って高さを調整する方法考え、スケッチを工事会社の方に送りました。


↑スパイラルダクトの45°エルボ 100Φのものもありました。

火災予防条例の技術的基準にはダクトを曲げる部分に「たわみ継ぎ手」というものを使用する方法も書かれています。しかし「たわみ継ぎ手」というものがどんなものなのか、消防署の方も具体的な形状など教えてくれません。事務所に帰ってから、ネットで検索した出てきたメーカーに問い合わせたところ、ガラス繊維を使ったものはあるが、消防法に規定がある素材(ロックウール、シリカ繊維等の無機繊維を基材とした耐熱性を有する特定不燃材料)を使ったものは、需要が少ないことから数年まえから生産をやめているとのことで、規定に合致するものを見つけられませんでした。

上は、消防署近くにある玉川浄水あとを利用した公園ですが、緊急事態宣言の効果か人影がありませんでした。

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