猪股邸 吉田五十八の夢の住宅 

先日、東京の世田谷区成城学園にある旧猪股邸(いのまたてい/猪股庭園)を見学しました。この住宅は(財)労務行政研究所の理事長を務めた故・猪股猛氏のご夫婦の邸宅として建てられたもので、主屋は文化勲章受章者の建築家・吉田五十八(よしだいそや)の設計によるものです。

樹木で覆われた広大な敷地(560坪)に建つ、約110坪の床面積をほこる猪股邸は、吉田五十八が独自に近代化させた数寄屋づくりを結晶化させた夢のような住宅です。

低く抑えられた屋根、建具を開け放すと庭(自然)と一体化する室内、椅子式と座式の融合、様々に工夫された建具や開口部などが特徴です。

玄関へは東側の門からアプローチ。プランを見ると絶妙な位置に2つの中庭が設けられていることが分かります。

旧猪股邸(いのまたてい)には3人の女中のほかに、運転手と庭師が一人ずつ居たそうです。

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敷地東側の門。派手ではないが、洗練されたこだわりが感じられる。

リビング:建具がすべて壁の中に引込まれ、室内と庭が一体化する。

庭側から見る。庭に植えられた杉苔が枯れないように、寒冷紗で日差しを和らげている。庭師の方に聞いたところ、夏場は日に3回水をやり、ピンセットで雑草を抜くのだそうです。

婦人室の庭側にソファが置かれ家具が造付けられている。床はじゅうたん敷き。

婦人用のクローゼットの窓も引込み窓。庭が絵のように切り取られていた。

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主人室は南側に縁側のある和室。雪見障子や欄間の障子が繊細で美しい。

主人室の北側の地窓。雨戸(通風機構付き)、ガラス戸、網戸、障子が壁に引込まれる。ガラス戸と障子を開けると心地よい風が流れる。

西端にある書斎(増築部)はコーナー窓が気持ち良く、窓台が腰掛けにもなる。

夫婦用の一畳台目の茶室(増築部)は今日庵(宗旦作)の写し。《水澤工務店

左が台目畳と向板、右奥が躙り口。簡素で美しい水屋の照明器具。

ダイニングと中庭。右はもう一つの中庭の見上げ。

写真はありませんが、キッチンは明るく広々していて使いやすそうでした。

茶室側への渡り廊下にあるトイレ。窓の外の景色が鏡に映り込み広がりが生み出されている。

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四畳半の茶室は又隠(宗旦作)の写し。《丸富工務店》

庭側の景色が楽しめるように、広めの躙り口と貴人口が設けられている。

躙り口の正面に設けられた床の間。壁は京壁。右は木枠と左官のディテール。

玄関とポーチには、玄晶石が四半(しはん)に敷かれ、連続感が生み出されている。

玄関扉も引込み戸。

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旧猪股邸住宅(猪股庭園) 成城学園駅(小田急線) 北口より徒歩5分 入園無料

お問い合わせ:(財)世田谷トラストまちづくり 03-6407-3311

*ボランティアの方に説明を受けることも出来ます。

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